イタリア・オペラ対訳本の出版・通販/舞台字幕制作/舞台言語表現監修/コンサート企画
おぺら読本出版は、イタリアオペラ対訳本の企画・編集・販売・字幕制作、舞台言語表現の監修、講演などを通し、イタリアオペラのさまざまな作品・文化を発信し続けています。
-
【86】影のない女
¥3,000
影のない女 作曲:リヒャルト・シュトラウス 2024年10月23日初版刊行 フーゴ・フォン・ホフマンスタール原作・台本「影のない女」に、リヒャルト・シュトラウスが作曲し、1919年10月10日ウィーン・シュターツオパーにて初演された。この物語に登場する人物はすべてホフマンスタールの想像上の世界に存在する。 皇帝は紺青宮に住まう人間の王であるが、精霊の姫を妃にしたために呪いを受け、3日以内に妃が「影」を得なければ、石にされてしまう。妃の父は精霊の王カイコバード。愛する皇帝を救うために自身の影を求めて人間界に降りる。皇妃の乳母は、姫の案内をして「影」を売る女を捜し染物師バラクの妻を見つける。貧しく罪の無い心を持つ染物師バラクは妻との間に子供を待ち望んでいる。しかし彼女は、貧しい生活に夫バラクを蔑み、生れてくるはずの子供たちを捨て永遠の美貌と若さを約する契約を結び、自らの「影」を売る。「まだ生まれ出ない子供たち」は神秘の谷間で皇帝と語り、真の支配の道は何であるかを語る。これらの登場人物が、水晶のような肉体の皇妃がどのように影を求め、得た影をどのように社会に還元するのか、是非御一読を。
-
【85】ポッペーアの戴冠(皇帝ネロ あるいは ポッペーアの戴冠)
¥3,000
ポッペーアの戴冠 (皇帝ネロ あるいは ポッペーアの戴冠) 作曲:クラウディオ・モンテヴェルディ 2024年8月25日初版刊行 ジョヴァンニ・フランチェスコ・ブセネッロの台本によるクラウディオ・モンテヴェルディ作曲の作品。古代ローマ帝国の皇帝ネロが、周囲の反対者を排除して、皇后オッターヴィアを流刑にし、寵愛するポッペーアを皇后とする物語。現存する筆写者不明のナポリ稿、ヴェネツィア稿の手稿本には、歌と低音部しか書かれていないため、上演に際して演奏者によって楽器・演奏が様々に異なっている。 プロローグと3幕による構成。プロローグでは、運命、美徳、愛の神がそれぞれ自身がもっとも偉大であると主張する。 ポッペーアには皇帝ネロの信頼のおける将校オットーネという夫がいるが、戦地から帰国し最初に目にしたのが路傍で眠っているネロ皇帝の近衛兵。ポッペーアがネロの寵愛を受けている事に気づくがオットーネもまたドゥルシッラという貴婦人を愛人にしている。哲学者セネカの忠告もむなしく皇帝ネロはポッペーアを皇后にすえる強固な意志を示す。現皇后オッターヴィアは何としても今の地位を確保するために、オッターヴィオを呼びつけポッペーアの殺害を命じる。困惑するオッターヴィオは愛人のドゥルシッラに相談。彼女の衣装を纏い殺害に行くよう助力する。中庭でまどろむポッペーアを殺害しようと剣を振りかざした時ポッペーアが目覚め、彼女はそこに剣を手にしたドゥルシッラを目にする。さて、殺害は成就するのか? 1643年謝肉祭のヴェネツィアで初演された。この時のタイトルは「皇帝ネロ、あるいは、ポッペーアの戴冠」であった。
-
【84】WERTHER ウェルテル
¥2,700
ウエルテル 作曲:ジュール・マスネ 2024年5月15日初版刊行 ドイツの文豪ゲーテ著「若きウェルテルの悩み」をジョルジュ・アルトマン等が台本化しジュール・マスネが1891年作曲した「マノン」に続くマスネの代表作。 若き詩人ウェルテルが、舞踏会に出席するための衣裳を着て現れたシャルロッテに偶然出会う。シャルロッテは母親との約束でアルベールとの結婚を控えているのだが、この事実を知る由もないウェルテルは彼女に自分の心の全てを捧げようと勝手な独りよがりの世界にのめりこんで行く。 シャルロッテとアルベールが結婚してからも、遠くから二人の仲睦まじそうな様子を見詰めているウェルテルは、自分だけが彼女を幸せにすることが出来ると嘆くばかりである。この事実を知ったシャルロッテは、心の冷静さを取り戻すようにウェルテルを諭し、旅に出るよう勧めるが、クリスマスには待っているとも付け加える。 クリスマス・イヴ。何度も躊躇したがウェルテルは約束の日にシャルロッテの前に現れる。愛を告白するウェルテル。アルベールの妻として拒否するシャルロッテ。残されているのは「死」であると、永遠の別れの言葉を投げ捨て彼女から離れるウェルテル。恐怖の予感に襲われるシャルロッテ。ウェルテルの部屋に入ってきたシャルロッテが目にしたものは? 1892年2月ウイーン宮廷歌劇場にて初演。またたく間に世界を席巻した名作。
-
【83】地獄のオルフェ(天国と地獄)
¥2,800
作曲:ジャック・オッフェンバック 2023年12月12日初版第1刷刊行 「地獄のオルフェ」は、わが国では「天国と地獄」としてよく知られた作品であるが、ギリシア神話のオルペウスの悲劇をグルックが作曲した「オルフェオとエウリディーチェ」を知的なパロディー化したエクトル・クレミューとリュドヴィック・アレヴィ台本によるジャック・オッフェンバック作曲の夢幻オペラ。フランスの第二帝政時代、社会が抱えていた矛盾に満ちた偽善性を見事に捉え、オルフェ論争を生み出したほど社会に大きな衝撃を与えた。本来であれば、亡くなったエウリディーチェを愛するあまり死後の世界に赴くオルフェオの感動的な神話を、あろうことか、オルフェとエウリディーチェのダブル不倫を土台に、 オペラの冒頭登場する美徳の守護神である「世論」によってこの作品の全体像が語られる。地獄の王とギリシア神話の神々の王ゼウスとの攻防が心地よく響く音楽によって聴衆を魅了してやまない。さて、オルフェオとエウリディーチェの運命は?台本はフランス語によるため登場人物はフランス語に合わせてある。 スマホ待ち受け画面
-
【82】Der Rosenkavalier 薔薇の騎士
¥3,200
作曲 リヒャルト・シュトラウス 2024年2月22初版刊行 フーゴ・フォン・ホフマンスタールの台本にリヒャルト・シュトラウスが作曲し 1911年ドレスデン宮廷歌劇場で初演された。 舞台は1740年、オーストリアの女帝マリア・テレージア統治下のウィーン。 元帥夫人マリー・テレーズは、年下の青年伯爵オクタヴィアンと熱愛中であるが 人生を知る彼女は、オクタヴィアンが若い恋人を作って離れていく予感に怯えながらも 覚悟している。新興貴族のファーニナルの娘ゾフィーが、元帥夫人の従兄弟の オックス男爵と父親の面子で婚約することになる。 彼女に届ける「銀のばら」の使者を推薦してもらうため元帥夫人を訪れた男爵は、そこに 居合わせた女中に変装したオクタヴィアンに異常なまでに関心を持つ。 そこで、元帥夫人は悪戯心を起こして「ばらの騎士」役にオクタヴィアンを推薦する。 ところが、「銀のばら」を携えてゾフィーのもとを訪れたオクタヴィアンは、 一目で彼女と恋に落ちてしまう。さて、オクタヴィアン、ゾフィー、オックス男爵の 恋のもつれは如何なる結末を迎える事か。 待ち受け画面スマホ
-
【81】ニュルンベルクのマイスタージンガー
¥3,400
ニュルンベルクのマイスタージンガーたち 2022年12月25日初版刊行 リヒャルト・ワーグナー作曲 若い騎士ヴァルターは中世の詩人に憧れていたが、自らも詩人になる事を決意し、ニュルンベルクに出立し裕福な金銀細工師ポーグナーに斡旋を依頼する。この時、ポーグナーの一人娘エーファの魅力の虜となる。6月24日の聖ヨハネ祭前日、聖カタリーナ教会での礼拝後、ヴァルターはエーファを待ち受け、彼女が婚約中であるかどうかを確認しようとする。彼女は婚約中であるが花婿は翌日のマイスタージンガー歌くらべの席で決定される事を知り、出場資格を得るための手ほどきを、靴職人ザックスの徒弟であるダーヴィットから受けるが、その余りにも煩雑な規則に辟易とする。 教会の中は、マイスタージンガーの会合のため仕切られている。ポーグナーやエーファとの婚約を強く希望する市の書記官ベックメッサーをはじめとして、続々とマイスターたちが登場し出席の点呼が終了すると、ポーグナーが立ち上がり、明日の「歌くらべ」優勝者に、自身の全財産と一人娘エーファを妻として差し出すことを宣言する。会場は騒然とした緊張感に包み込まれる。さらに、ポーグナーは、組合に加入を希望する騎士の存在を明らかにし、ヴァルターをこの場で歌わせたいと提案する。ベックメッサーの強い反対があったにもかかわらず、ザックスの後押しで試験が始まるが、結果は、惨憺たるもので「歌いそこね」の判決が下る。さて、エーファをめぐる歌合戦は如何なる結果を見る事になるのか、御一読あれ。 スマホ待ち受け画面。
-
【80】Giulietta e Romeo ジュリエッタとロメーオ ニコーラ・ヴァッカイ作曲
¥2,500
ジュリエッタとロメーオ (ニコーラ・ヴァッカイ作曲) 2022年2月8日初版刊行 ベッリーニの「カプレーティ家とモンテッキ家」が発表される5年前に台本作家フェリーチェ・ロマーニはニコーラ・ヴァッカイにこの台本「ジュリエッタとロメーオ」を提供し、1825年ミラーノで初演され大成功を収めた。勿論シェイクスピアノ「ロミーオとジュリエット」に取材した内容であるが、ヴァッカイの作品はイタリア中世の教皇派と皇帝派という政治的な抗争に巻き込まれるが、それぞれの家名を放棄しても愛を成就させるという高貴な精神構造を支え、重厚で透明感に満ちた見事な音楽構成の上に音符が全幕一貫して表現者たち、ジュリエッタ、ロメーオ、ジュリエッタの母親アデーリア、父親カペッリオ、ジュリエッタの政略結婚相手テバルド、ロメーオとジュリエッタの橋渡し役ロレンツォの個々人に食い込むように作曲され、一気に終盤を迎える洗練された作品として仕上げられている。とりわけ、ジュリエッタとロメーオの死の場面、第2幕最終景などは、ベッリーニの「カプレーティ家とモンテッキ家」の最終景に組み込まれて上演されるほど際立った印象を与えてくれる。 尚、ベッリーニの「カプレーティ家とモンテッキ家」の台本はヴァッカイのジュリエッタとロメーオ初演の後、フェリーチェ・ロマーニ自身の手によって改訂されベッリーニに提供された。 おぺら読本出版対訳シリーズNo7、「カプレーティ家とモンテッキ家(ロメオとジュリエット)⇒わかりやすいようにこのタイトルにしている」とは同作品対訳本ではありませんのでご注文の際ご注意ください。 スマホ待ち受け画面
-
【79】オルフェーオとエウリディーチェ
¥2,400
オルフェーオとエウリディーチェ 作曲:C・W・グルック 2021年11月20日新刊発行 ギリシア神話に取材した古代ローマの詩人オウィディウスが描き上げた「変身物語」の中の一編をウェルギリウスの詩篇「アエネーイス」に重ね、カルツァビージが台本に仕上げ、グルックが音符に塗り込み新たな世界を築き上げたオペラ界の至宝とも言える作品。 オルフェーオは芸術の女神のひとりカリオペアの息子で、歌と竪琴の名手であった。彼の歌と音楽には野獣や草木、岩石さえも魅了された。舞台は月桂樹や糸杉の木立が立ち並ぶ中、水蛇に噛まれ非業の死を遂げたエウリディーチェの墓を取り巻き、牧童たちや妖精たちが嘆き悲しんでいるところから始まる。何度も繰り返される妻の名を呼ぶこの不幸な夫の嘆きに、神々は慈悲の心を動かし彼を憐れみ、オルフェーオが黄泉の国にから妻を連れてくることを好意的に認めたのであるが、地上に辿り着くまでは、決して彼女を振り向かないというという条件のもとであった。もしオルフェーオが自分の事態を説明しようとしたり、振り返ったりすると彼女を永久に失うという。オルフェーオはこの試練に挑み、黄泉の国へと旅立つ。しかし、心優しき夫は、溢れる情愛に抗しきれずに禁制の誓約を破り、結果、永遠にエウリディーチェを失ったのである。ここまでが、変身物語やギリシア神話で伝えられている内容であるが、神聖ローマ帝国フランツ1世の洗礼名聖人記念日にあたる1762年10月5日にウイーンで初演されたこの作品では、愛の神が「お前の愛の誠は十分示された」と告げ、エウリディーチェは再び息を吹き返す。オルフェーオとエウリディーチェは羊飼いやニンフたちと共に愛の神に感謝し、愛を賛美することで霊名日に花を添える結末となっている。 スマホ待ち受け画面
-
【78】La Rondine (つばくろ)
¥2,500
ラ・ロンディネ つばくろ 2021年9月初版刊行 第1次世界大戦禍、敵国からの委嘱にこたえて作曲されたいわくつきの作品。これまでプッチーニの全ての作品を出版していたリコルディ社も出版を断り、ライバル出版社ソンツォーニョ音楽出版が引き受けた。物語は実に明快に進行する。 富豪ライモンド・フェルナンデスの妾マグダは何不自由なく生活しているが、自分がかつて夢見た自由な愛に生きる生活とは程遠い。そんなある日の事、パリの邸宅でパーティーをしていると、詩人のプルニエが手相占いを始め、マグダに、ツバメのように自由に海を越えて愛に生きる未来を予言する。かつて夢見た世界を受け入れるかどうか迷っていたが、サロンから誰もいなくなった時、マグダは決意する。尻軽な町娘の衣裳に着替え、パリのクラブ「ブリエ」に足を運ぶと、そこで、運命の人ルッジェーロと出会う。意気投合したところにパトロンのライモンドが現れるが、マグダは自分の夢を現実化させるために彼の元に戻らず、ルッジェーロとの生活を、パリを離れ、コート・ダジュールのリヴィエラに新たな愛の巣を築いた。結婚を求めるルッジェーロと自由な愛に生きる事を求めるマグダ、さて、結末は? ジュゼッペ・アダーミのリブレットは、オペラ台本というよりは戯曲のように洗練され、音楽がなくても見事に想像を可能にさせるテンポ感と文学性を併せ持った秀作。 是非御一読あれ。 日本語タイトル表記「つばめ」が多い。
-
【77】Oberto オーベルト(サン・ボニファーチョ伯爵)
¥2,300
作曲:ヴェルディ 2021年8月15日初版刊行 サン・ボニファーチョ伯爵オーベルト ジュゼッペ・ヴェルディ26歳。彼のオペラ第1作。この作品の成功がヴェルディのオペラ人生を決定させた記念碑的作品。 1839年11月17日にミラノ・スカラ座で初演された。台本は「ナブッコ」「第1次十字軍のロンバルディア人達」「ジャンヌ・ダルク」「アッティラ」「ルイーザ・ミラー」「イル・トロヴァトーレ」などの作品でヴェルディとコンビを組んだテミストークレ・ソレーラが提供した。 サン・ボニファーチョの伯爵オーベルトは、ヴェローナのサリングエッラ家救援に加勢したエッツェリーノ・ダ・ロマーノとの戦いに敗北しマントヴァに身を隠すが、娘レオノーラは、すでに母を亡くしていたため、叔母の世話になりヴェローナに留まっていた。若きサリングエッラ伯リッカールドは、結婚する事を前提に名を偽り、オーベルトの美しい娘レオノーラを誘惑した。しかし、政治的なリッカールドは、エッツェリーノの妹クニーツァを強引に口説き落とし、彼女と結婚する事を公表する。ヴェローナの支配権に関してサリングエッラ家に借りのあるエッツェリーノ家にとっては、この婚姻は好都合であった。この事実を知ったレオノーラは、絶望して、リッカールドの裏切りを暴露するために、婚礼の日にイタリア北部の古都バッサーノにやって来る。一方、マントヴァに身を隠していたオーベルト伯爵もリッカールドの、娘に対する不実と、かつての怨念を清算するためにリッカールドとの決闘を決意しバッサーノにやって来た。因縁の4者が婚礼の日にバッサーノの居城に集結する。結果は? スマホ待ち受け画面
-
【76】Serse セルセ(クセルクセス1世)
¥2,600
作曲:ヘンデル 2021年7月15日 初版刊行 圧倒的な存在感溢れる古典歌曲の名曲 オンブラ・マイ・フ Ombra mai fù のレチタティーヴォで始まるオペラ。ヘロドトスの「歴史」や旧約聖書「エステル記」に取材した作品という事になると、史実に基づいた難解な人間関係を縦糸に音符を散りばめてゆくグランドオペラを想像するだろうが、作曲者ヘンデルは、この作品セルセ(クセルクセス1世)に政治的な人間関係を一切介入させず恋愛関係に終始させた。 ペルシア国王セルセの婚約者アマストレはタゴール王国唯一の後継者であるが、セルセの様子を窺うために男装の麗人として登場する。 しかし、セルセは、異母兄弟アルサメーネの恋人ロミルダの魅力に魅惑され、あろう事か彼女を王妃として迎え入れようとする。セルセからロミルダの父、領主アリオダーテに自分と同じ血を引く者との婚姻関係をロミルダに求める旨を告げると、アリオダーテはセルセの弟君アルサメーネと娘ロミルダとの婚姻を認めてもらえたと勘違いし、ふたりを結婚させてしまう。 ロミルダの妹アタランタもアルサメーネを片思い… 何重にも愛の横糸が複雑に絡まりあい、さて、その結果は? Ombra mai fu はじめ10数曲にも及ぶ珠玉のアリアに包み込まれた不滅の名曲。
-
【75】FEDORA (皇⼥フェドーラ)
¥2,700
作曲:ウンベルト・ジョルダーノ 2021年4⽉5⽇ 初版刊⾏ アンドレーア・シェニエの大成功に気を良くしたウンベルト・ジョルダーノは、20世紀初頭の世界的舞台女優サラー・ベルナールがサルドゥの戯曲「フェドーラ」を演じ世に知らされるや、ジョルダーノは一気にオペラ作品として仕上げ、1898年ミラーノのテアートロ・リーリコで初演された。サンクトペテルブルクの皇女フェドーラが婚約者ウラディミーロ・アンドレイエヴィッチ伯爵を無政府主義者たちに殺害され、その復讐に燃えるという興奮させる筋書きは圧倒的に受け入れられた。フェドーラは殺人犯ローリス・イパノーフ伯爵の自白を導き出し、罪を白状させるが、先に発砲したのは婚約者ウラディミーロの方でローリスは自己防衛のため発砲した事実を知ることになる。さらに、この発砲には女性を絡めたさらなる複雑な原因が存在し、この事実を知ったフェドーラの心に、母性をくすぐる愛が芽生え、あろうことか、ふたりはフェドーラのスイスの別荘で愛の生活に入る。しかし、ローリスの母と兄が、フェドーラの密告により虐殺された事実を知ったローリスの激情を前に、服毒自殺を図るという悲劇。 3幕仕立で、第1幕はサンクト・ペテルブルグ、第2幕はパリ、第3幕はスイスを舞台に設定し、ロシアの警察官吏、フランス大使館の外交官、ポーランドのピアニスト(スパイ)、ロシアから亡命した伯爵夫人など飽きさせる事のない登場人物と舞台構成で観客を引き付けて放さないグランドオペラである。 スマホ待ち受け画面
-
【74】Mefistofele メフィストーフェレス(悪魔メフィストーフェレス)
¥2,600
アッリーゴ・ボーイト作曲 2020年11月27日初版刊行 ゲーテの「ファウスト」に取材した作品は多数あるが、アッリーゴ・ボイートの台本による〈メフィストーフェレ〉は、ファウスト博士と悪魔の契約を結ぶ相手、悪魔メフィストーフェレス(このオペラではメフィストーフェレ)をタイトルロールにしたボイート渾身の傑作である。 大合唱曲サルヴェ・レジーナ、ファウスト博士「平野から、牧場から」、メフィストーフェレ「俺は悪魔だ」「これが無の世界」はじめ、グリム童話の「ねずの木」を編集したファウストの恋人マルゲリータの歌う「あの夜、海の底深く」など圧倒的なエネルギーを持つ大きなアリア、ロマンツァに散りばめられた雄大な構想の上に構築された巨大な宮殿のような作品である。物語の構成は、ポンキエッリのラ・ジョコンダ、ヴェルディのオッロ、ファルスタッフ、シモン・ボッカネグラはじめ、同時代の多くの作曲家に台本を提供しその世界的名声と実力はつとに知られていた作詞家ボイート自身が作曲したため、納得の行くまで校正を重ねた結果余りにも長大なオペラ作品になってしまったが、縮小改訂版をボローニャで発表し一気に評価は高まった。 オペラファン必読。初演版、縮小版いずれも掲載。 スマホ待ち受け画面
-
【73】Un giorno di Regno ossia Il finto Stanislao( 一⽇だけの国王あるいは偽のスタニズラーオ)
¥2,500
作曲 ヴェルディ 2020年9月10日初版刊行 タイトルは「一日だけの国王」として発表されたが、アレクサンドル・デュヴァルによる原作「偽のスタニズラス」にあわせて、後に「スタニズラーオの影武者」として一般に上演、演奏される事になった。ポーランド国王スタニスラーオがワルシャワに帰国するまで国王の帰路とは別ルートで敵の目を紛らわすために影武者として騎士ベルフィーレが選ばれ、彼がブルターニュのブレスト近郊ケルバール男爵の館を表敬訪問するところから物語が始まる。丁度ケルバール男爵の娘ジュリエッタと男爵の姪である若き未亡人ポッジョ侯爵夫人の結婚式を明日に控え従者たちが祝宴の準備に奔走しているところに影武者が訪問する。ケルバール家は大騒ぎ。実に善き日であると祝福の声が行き交う中、ジュリエッタの結婚相手の財務長官が登場すると彼女は不快感を露にする。実はジュリエッタは財務長官の甥、エドアルドと相思相愛。もう一組のポッジョ未亡人も相手との婚礼に不満。そこに登場した偽の国王は、実は、ポッジョ夫人と相思相愛。この二組の複雑に入り組んだ婚礼の結末は? ヴェルディによる喜劇であるが、フェリーチェ・ロマーニの高貴な台本を確実に受け止め、ロッシーニとは全く異なった喜劇観を見事に描きだした初期の傑作。
-
【72】Il Viaggio a Reims( ランスへの旅 あるいは 黄金百合亭)
¥2,600
作曲 ロッシーニ 2020年8月25日初版刊行 1825年に挙行されたフランス国王シャルル10世の戴冠式のためにジョアキーノ・ロッシーニによって作曲された全1幕のドラマ・ジョコーソ。パリ中の劇場が戴冠式とフランスの栄光を讃えた作品を上演する事を計画していたが、ロッシーニも新国王とブルボン王家を讃えるためにこの作品の作曲に着手した。歴代のフランス国王の戴冠式はランス大聖堂で行われてきた。プロムピエール温泉保養所にある「黄金百合亭」を舞台にして、戴冠式を見学に来たヨーロッパ各国の名士たちによって戴冠式の前日、正確には1825年5月28日に繰り広げられる日常をオペラ化した。ランスに向けて出発するために馬車を待っている宿泊客。そこに一台も馬車が見当たらないとの報告が入り、大混乱の最中、宿の女将に手紙が届き、ランスに行かずともパリでも祝宴が開催されると言う事が分り、一同それぞれの出身国の音楽を披露する事でシャルル10世の戴冠を祝福することになる。戴冠式で盛り上がる1825年6月19日に、当時パリの王立歌劇場テアトロ・イタリエンヌ《イタリア劇場》の音楽監督に就任していたロッシーニは、ジュディッタ・パスタをはじめとする、当時パリで活躍していた最高水準の歌手をキャステングし発表し、タイムリーな題材でもあった事から大成功を収めた。この作品を評して、スタンダールは、ロッシーニの最も優れたオペラ作品であると絶賛している。 スマホ待ち受け画面
-
【71】Don Carlos (ドン・カルロス)【5幕版】
¥2,700
作曲 ヴェルディ 2020年7月31日 初版刊行 シラー原作「スペイン親王ドン・カルロス」を基調にヴェルディがパリ・オペラ座のために作曲し、1867年3月初演した5幕仕立の壮大な人間味溢れる傑作。初演時はフランス語での台詞であったが、その後、1884年にアキッレ・デ・ラウジェレスのイタリア語訳台本に4幕版に改訂され現在に至るが、根底に流れるスペイン親王ドン・カルロとフランス王エンリーコ2世の娘エリザベッタ〔一度はドン・カルロの婚約者であったが、後にドン・カルロの父親スペイン国王フィリッポ2世の妃となる〕との不幸な恋愛を中心に、圧政に疲弊するフランドルの民を支えるポーザ侯爵との深い友情関係、ドン・カルロを秘かに慕うエーボリ公女のエリザベッタ王妃への死を招く嫉妬などが複雑に重なりながら、祖父であった神聖ローマ帝国カール大帝の墓前に自らの命を捧げることでオペラは終焉する。登場人物それぞれに見事な芸術的アリア、重唱が惜しげもなく与えられ総合芸術にふさわしい作品としてある意味原作を凌駕する仕上がりである。舞台はパリ、フォンテンブローの森に始まり、スペインのカール大帝墓前に終焉する地球規模の作品である。 スマホ待ち受け画面
-
【70】Suor Angelica (修道女アンジェリカ)
¥2,200
作曲 プッチーニ 2020年6月25日初版発行 プッチーニ作曲の「外套」「ジャンニ・スキッキ」とこの作品で〈三部作〉を構成している。1918年12月14日にメトロポリタン歌劇場で〈三部作〉が初演上演された。イタリアのある修道院。中庭での修道女たちの会話はそれぞれの願望の話題となり、食事の話や、ペットの話に花が咲く中、アンジェリカは自分には何の願望も無いと述べる。同僚の修道女たちは、彼女が修道院に入ってから7年間家族から一切の便りが無く、彼女が何を切望しているのか皆は良く知っているのだ。そんな時、別の修道女が豪華な装飾をほどこした馬車が門前に到着したと伝えに来る。一同の高まる期待の中、修道院長が、公爵夫人のアンジェリカへの面会の旨を告げる。興奮するアンジェリカを前に、叔母の公爵夫人は淡々と語り始める。アンジェリカの両親が相次いで他界したことで、遺産はアンジェリカと妹に遺されたこと、公爵夫人が後見人としてその遺産を管理していること、アンジェリカの妹が、さる貴族と結婚するため、アンジェリカの遺産に対する権利を放棄することで公爵家に誠意を示すことを要請する。彼女は納得するが、最大の関心は出産直後に引き離された息子のこと。息子の消息を尋ねると、2年前に高熱のため亡くなったという事務的な返答。彼女は虚脱状態のまま書類に署名する。無言のまま退出する公爵夫人には目もくれず、絶望の中で覚悟を決める。人を救うはずの薬草を自らの死と天国にいる息子との再会のために処方し飲み干す。自らの命を絶つ大罪は天国の門を閉ざす事を意味するが、聖母に懸命に祈ると、奇蹟がおこり、天使たちの合唱の中、赤子を抱いた聖母が現れる。アンジェリカは小さな叫び声をあげ、静かに息絶え、幕。
-
【69】L' Amico Fritz( 友人フリッツ)
¥2,500
作曲:マスカーニ 2020年6月15日 初版発行 ローマのコスタンツィ劇場から軽妙なオペラの委嘱を受けたマスカーニは、前作の激しい内容のオペラ「カヴァッレリーア・ルスティカーナとは対峙する牧歌的なオペラを書き上げた。劇中の間奏曲はじめ、「桜ん坊の二重唱」「わずかばかりの花束」「愛よ、美しい心の光」など美しく親しみやすい楽曲に溢れたオペラ。ユダヤの司祭ダーフィットは、誰かれなく結婚に結びつける悪癖にもにた趣味を持っている。彼は夫婦の愛の喜びを説くが、独身主義のフリッツは全く取り合わない。裕福な地主フリッツの誕生日。祝宴に友人たちがフリッツの館に集まる中、農地管理者の娘スーゼルがスミレの花束を手にお祝いに駆けつける。フリッツは彼女の清廉潔白さに感動を覚えるが、ダーフィットには結婚など御免だと主張を変える事はない。神の恩恵でもあるかのような素晴らしい天候の朝、偶然にもスーゼルの桜ん坊摘みを手伝う事になったフリッツ。この様子を窺ったダーフィットは、聖書を頼りにふたりにある計略をめぐらせ、ふたりを結び付けようとするが、さて、結果は ? スマホ待ち受け画面あり
-
【68】La donna del lago( 湖水〈うみ〉の麗人)
¥2,600
作曲:ロッシーニ 2020年2月29日 初版発行 スコットランド北部のカトリン湖の孤島に、ジェームス5世スコットランド王から追放されたアンガスのダグラスは娘エレーナと密かに暮らし、反乱軍を組織し復活の機会を窺っている。反乱軍の勇士ロドリーゴはダグラスの娘エレーナと婚約し、一族の絆を固め国王ジェームス5世への反旗を誓うが、エレーナは同じ反乱軍騎士マルコムと相思相愛の仲である。父親の命を受けロドリーゴと婚約したものの、心はマルコムに傾いている。そんな時、ウベルトと偽名を名乗る騎士がこの孤島に迷い込みエレーナに助けられる。実はこのウベルトこそジェームス5世の仮の姿であったが、救助された礼にと、自身の指輪をエレーナに贈る。この指輪はかつて縁あって国王の命を助けた礼に贈られた由緒ある指輪で、この指輪を国王に示す事で如何なる願いも叶うというのだ。反乱軍首領の娘であるエレーナが果たしてどのようにこの指輪を使いこなすのか ? ロッシーニが1819年ナポリ・サン・カルロ劇場のために作曲したオペラ・セーリア。原作は同名の叙事詩でサー・ウォルター・スコットの手になる。 スマホ待ち受け画面あり
-
【67】RINALDO (リナルド)
¥2,500
作曲:ヘンデル 2019年11月4日初版発行 抒情詩人トルクアート・タッソー原作「解放されたエルサレム」に取材したオペラ作品は多数存在するが、その中でもとりわけヘンデル作曲の「リナルド」はLascia ch’io pianga "涙するがままにさせて »はじめ輝くばかりの美しいアリアにちりばめられた古典的作品として300年に亘り歌い継がれ賛美され続けている。第一次十字軍遠征をテーマにしてはいるが、決して政治的な解決を求めることなく、エルサレムを解放した褒章として十字軍指揮官ゴッフレードの娘アルメリーナを妻として迎えるはずの英雄リナルドに対して、魔女でありダマスカスの王妃アルミーダ、エルサレム王アルガンテの介入によって翻弄される愛憎を見事に描き出した秀作。アルミーダはアルガンテと恋仲であるにも拘らず英雄リナルドに惹かれ魔法を使ってアルメリーナに変身しリナルドに迫る。一方アルガンテは捕われのアルメリーナに心奪われ、複雑な愛情が交錯するが、リナルドの英雄的活躍によりエルサレムが解放されるとアルガンテ、アルミーダともに改宗し、おぞましい恨みが美徳によって打ち負かされるという結果で終焉する。 スマホ待ち受け画面あり
-
【66】L' italiano in Algeri(アルジェのイタリア娘)
¥2,700
作曲:ロッシーニ 2019年10月5日初版刊行 アルジェのイタリア娘 舞台はオスマン帝国ムスタファー太守のハレムを中心に展開される。王妃エルヴィーラに飽き飽きしてきた太守ムスタファーは、海賊の首領ハーリーに新鮮な感覚で付き合うことのできる若いイタリア人娘を新しい妃に迎えるために拉致を依頼する。現王妃は奴隷のリンドーロに与え、二人ともイタリアに送り返そうという魂胆。丁度そこに、嵐のため難破した外国船の避難民を救助した海賊ハーリーは、太守ムスタファー好みのイタリア娘イザベッラを発見し、太守に届ける。一目で気に入った太守はイザベッラを新王妃に据えるためにエルヴィーラとリンドーロを出国させようとするが、実はこの奴隷リンドーロはイザベッラの恋人であったことから喜劇性は一気にたかまる。さて、結論はいかなることに、本編第2幕をじっくり読まれんことを。1813年に発表されたイタリアオペラ・ブッファの最高傑作のひとつで、ロッシーニが作曲した。 スマホ待ち受け画面あり
-
【65】La Clemenza Tito( 皇帝ティトウスの慈悲)
¥2,500
作曲: W・A・モーツァルト 2019年5月17日 初版発行 古代ローマ帝国ヴィテッリオ皇帝の娘ヴィテッリアは、自分に帝位が譲渡されるものと信じていたが、父親の失政により在位わずか8ヶ月でウェスパジアヌスに奪われた。 10年間に亘る帝国の支配の後ローマは息子のティトウス=ティートに譲渡された。時、79年。この年、ヴェスヴィオス火山が大噴火し、ポンペイが埋没しエルコラーノが火砕流に飲み込まれたが、ティートは都市と民の救済を優先し、善政が認められる。 皇后選択に及びティートは親友セストの妹セルヴィーリアを指名するや、セストの恋人でもあるヴィテッリアの怒りはティート暗殺の陰謀を画策し、セストに実行させることで納めようとするが… タイトルの「皇帝ティトゥスの慈悲」の慈悲とは ? 1791年に発表されたモートァルトのシリアスオペラの最高傑作。 スマホ待ち受け画面あり
-
【64】La Gioconda (ラ・ジョコンダ)
¥2,700
作曲:アミルカーレ・ポンキエッリ 2019年4月9日刊行 盲目の母を導き、恋人のエンツォに会うためにサン・マルコ広場にゴンドラ競争の祝祭のためにやって来たジョコンダ。宗教裁判所のスパイで流しの歌手に変装したバルナバが、密かに慕う歌姫ジョコンダの様子を窺う。競技後敗者ズアーネに近づき、敗因を盲女の呪いであると吹聴するや、仲間たちとその女を火刑にせよと魔女狩りを叫ぶ。市民を巻き込む騒動に発展するが、そこに宗教裁判所長官アルヴィーゼとその妻ラウラが現れ、ラウラの懇願により盲女は許され、感謝したジョコンダの母親はラウラに自身のロザーリオを与え、幸運を確約する。実はラウラとエンツォはかつて恋人同士であったが、再会するや否やラウラはエンツォとの逃亡を図り、ジョコンダは母親を助けられたことから自分の愛と命を犠牲にして二人の逃亡を助ける。ヴェルディのアイーダ以降オテッロが作曲されるまでの、イタリアオペラ不毛時代におけポンキエッリの最高傑作。 スマホ待ち受け画面あり
-
【63】Faust(ファウスト)
¥2,800
作曲:グノー 2024年1月15日刊行 ドイツの文豪ゲーテの原作「ファウスト」の第一部をもとにシャルル・グノーが作曲。 フランス語による台本。 1859年パリ、リリック座で初演。原題のファウストは16世紀の伝説的な魔術師であり学者でもある。 このファウスト博士は悪魔メフストーフェレスに魂を売ってでも、青春を取り戻そうという欲望にかられ、悪魔メフストーフェレスと契約を結ぶ。その結果、青春を取り戻し、純真無垢な小市民の娘マルグリートに恋心を抱き、同時に肉体的欲望まで蘇り、この娘を妊娠させてしまう。未成年との情交は死罪。悪魔が描き出す幻想と幻影のなか、マルグリートは処刑される。作曲者グノーは音楽の道に進むか聖職者となるか葛藤したほど宗教的な道徳観の強い人格であったが、この台本には宗教的要素よりも純粋な恋愛感情が押し出され、19世紀フランスオペラの真髄に触れる傑作を産みだした。 スマホ待ち受け画面あり